健康になるための心の使い方

だれでも使えるこころの治癒力

〈本記事の内容〉

  • 病気と心は関係している。自分の心の状態を観察してみよう
  • 心の使い方次第で治癒力を高めることができる
  • 「信念」「思考」「イメージ」「感情」がカギ

自然療法の「まるごと見る」という健康観

病気になった人や体調を崩した人と話をしていて、自分自身のストレスについてほとんど自覚のない方がいることに気づくことがあります。

人は、自分を客観的に見ることはむずかしいもの。
心のどこかに長い間苦しみがあっても見過ごしてしまうことの方が多いかもしれません。

自然療法では、「その人をまるごと見る」ということを大事にしています。そして、その人の症状と内面は密接に関係していると考えます。

「症状が体に表れているということは、心の部分にも何らかの苦しみや葛藤が潜んでいるはず。目に見えない部分にも光をあててみましょう」というのが自然療法の見方です。

ストレスを乗り切るために

ストレスは挙げたらきりがないほど、世の中にありふれています。親族の死や離婚、事故といったものから、「お金が足りない」「部下が思うように動いてくれない」「予定が変更された」「天気が悪い」など些細なものまで無数にあります。

実は、この日々の小さなストレスが病気の原因にもなり得る、という報告があります。

免疫学の分野で有名な安保徹氏は、「がんにかかった人は、体の中の免疫が徹底的に抑えつけられるような強いストレスがあったはず」ということを述べています。
ストレスが蓄積されていくと、それによって免疫系の働きが抑制され、次第にがんのリスクが高まるとのことです。

もちろん、ストレスがあっても健康な人はたくさんいます。そういう人たちは、どこかでバランスをとっているか、ストレスを跳ね返すくらいの強さをもっているか、あるいは心を明るくするための何らかの工夫をしているのでしょう。

では、ストレスを受けやすい人はどんなことに気をつければよいのでしょうか。

自然療法の権威であるアンドルー・ワイル博士は、著書『癒す心、治る力』のなかで健康な心を持つためのヒントを挙げています。

心のはたらきを活かす

ワイル博士は、心身の健康実現のために「信念」「思考」「イメージ」「感情」の四つの心の働きを最大限に活用することをすすめています。

① 強い信念をもつ

ワイル博士が経験した、信念にまつわるエピソードをご紹介します。

あるとき、博士はクローバーの生い茂った場所で、ひとりの少女に出会います。この少女は四つ葉のクローバーを見つけるのがとても得意なのですが、そのスピードが異常に早いのです。

くるりと後ろを向いて準備します。そしてスタートの合図とともに振り向くなり、一分もたたないうち、四つ葉のクローバーを見つけ出すのです。それが一度や二度ではありません。

ワイル博士は不思議でなりませんでした。自分では、目をこらしても見つけられなかったからです。

そのうち博士は、少女の成功の鍵が何であるかに気づきました。それは、少女が「四つ葉のクローバーがみつけられるのを待っている」と信じていることでした。この信念こそが重要であると見抜いたのです。

さっそく博士も、少女と同じように信じてさがしてみました。すると、すぐに四つ葉のクローバーが見つかりました。それだけでなく、一か所で何本も見つけたり、ときには五つ葉や六つ葉のクローバーも見つけたりすることができたのです。

この経験から、博士は病気を治すための大事な教訓を得ました。
それは、治癒を妨害せず、促進する方向に信念を変えるためには、同じ病気の治癒を経験した人を探すこと以上の方法はないように思われるというものです。

まずは強い信念をもちましょう。その信念が体の細胞に働きかけ、回復を早め、健康をつくる力になります。

② 思考を手放す

次にワイル博士は、考えることからの解放をすすめています。

人は一日中ものを考えていますが、ともすると不安、罪悪感、恐れ、悲しみといった治癒をさまたげる思考に陥ることもあります。
その対策として、博士は「からだの感覚に注意を集中すること」や「呼吸に注意を向けること」がよいといいます。つまり瞑想です。

さらに、「瞑想の真の目標はたえずそれを行うところにあり、たえず世界をとおりすぎて行きながら、行動のなかで瞑想しつづけるところにある」と述べています。

最近ではマインドフルネス瞑想が注目されていますが、そうした瞑想は心を落ち着かせたり、よいアイデアを出したりするためだけではなく、健康にも役立つものです。

私たちは、小さなころから「頭で考えて答えを出す」ように教えられてきましたが、ときにはそういう枠をはずし、「頭から抜け出して感じること」を体験してみてはいかがでしょうか。

➂ イメージの力を使う

イメージの力は、自発的な治癒を誘発するためにたいへん役立ちます。これはワイル博士だけでなく、いろんな学者やセラピストも述べていることですが、イメージを使って実際に病気を治したりすることもけっこうあります。

日本では、まだイメージ療法や催眠療法といった心理臨床を病気治療の目的で直接利用されることは少ないですが、アメリカなどでは積極的におこなわれているようです。

ワイル博士も、何人もの患者をイメージ療法のセラピストのもとに送り、イボが完全に消えたり、痛みがなくなったりするケースを著書のなかでいくつも挙げています。

ちなみに、がんの心理療法でイメージを使用するサイモントン療法も有名です。そこでは患者は、がん細胞が溶けたり、やっつけられたり、食べられたりする姿をありありとイメージします。そうした技法を使って一定の成果を出しています。

自分なりに、病気が治っていく様子をできるだけ明瞭、かつ詳細に「描く」ことができれば、それに応じて体もよい反応が表れてくるでしょう。ポイントは継続することです。

④ 感情を刺激する

一般的に、健康でいるためによい感情を持つことが大事であるといわれますが、ワイル博士はもう少しふみ込んで感情の強さが力を持っているといいます。

たとえば、「恋におちたり、怒りを表現したりしたあとに治癒反応が起こる」と述べ、さらに感情の内容がどのようなものであろうと、問題なのは感情的な鈍さだといいます。

年齢とともに、何かに熱中したり、がむしゃらになったりすることは少なくなります。新しい人との出会うチャンスも減ってきます。生活に刺激がない状態は不健康である、とワイル博士は警告します。

抑うつについても、博士は自分の経験から、内面にためこまれたエネルギーがおさえこまれているのだ、といいます。逆に、ためこまれたエネルギーを動かすことができたら、自発的治癒に向かうといえます。

博士の「感情の激しさは治癒系賦活の鍵」という言葉は印象的です。

わたしたち日本人は、感情を表に出すことがあまり得意ではありませんが、もし自分のなかにためこんだ感情があるなら、思いきって吐き出すことも必要かもしれません。

最後に

以上、ワイル博士による心の健康アドバイスをみてきました。

自然療法では、こうした心の状態も含めたその人全体を見て、適切なアプローチをおこないます。
専門家によって考え方や手法も変わってくるので、自分に合うところを見つけていただければと思います。当店でも個人相談を受けつけています。お気軽にご連絡ください。